英語でも日本語でもどこでも野球が好き
OddRoomingはどこでも野球が好きです。ニューヨークに在住歴の長いMaster Wotazumiは当然ながらニューヨークでは地元球団名門ヤンキースやメッツが気になっておりましたが、基本「今いる場所のチームを応援する」というのが信条らしく、おそらくボストンに住んでいたなら間違いなくレッドソックスファンになっていたことと思います。ということでOddRoomingは野球シーズンにはよく野球を観戦(主にTV)することになるのですが、日本でもアメリカでもルールは一緒なので英語の壁など関係なしに楽しめ、一方で英語でアナウンスされる用語の日本語の違いなども非常に興味深いものです。例えば「sacrifice」という言葉は「犠牲」という意味ですが野球でも送りバンドなど自分がアウトになって進める戦術にはsacrificeがスコアに記されていておもしろいなーと思ったものでした。
そもそも野球用語のネイティブは全部英語だった
でもふと考えてみると、本来野球はアメリカで発展し日本に伝わったものであって野球用語のネイティブは英語なのです。だから「sacrifice fly」に「犠牲フライ」という日本語をあてがったという方が正しいのです。しかも主な野球用語の英語から日本語への翻訳は、かの正岡子規が行ったのだとつい最近知り軽い衝撃を受けました。正岡子規は自身が野球の熱烈なプレイヤーで相当の「野球狂」だったというのも全くイメージになく、かなり意外。正岡子規は病弱で他のスポーツには全く興味を示さないなかでなぜか当時日本に導入されたばかりのベースボールに夢中になり「変態現象」とまで呼ばれていたとのこと。(出典:Wikipedia「子規と野球」)さらには多くの野球用語を日本語に翻訳し文学を通じて野球に貢献したことが評価されて「野球殿堂入り」までしております。ちなみに 「野球」という言葉をつくったのは正岡子規ではなく中馬庚という人で彼も野球殿堂入りしています。
「三振」の原語は「ストライクアウト」でどこにも三はない
正岡子規が翻訳した野球用語として判明しているのは、「バッター」「ランナー」「フォアボール」「ストレート」「フライボール」などを、「打者」「走者」「四球」「直球」「飛球」としたということで、「ベースボール」を「野球」に、そして「ショートストップ」(ショートの英語・そもそもこのショートストップという言葉自体も面白い」)を「遊撃手」と訳したとわかっているのは先述の中馬庚なのですが、Master Wotazumiによると、「野球」と「遊撃手」以外はほぼ正岡子規が言葉をあてがったのではないかということで、妄想でいろんな野球用語を思い浮かべるだけで実に味わい深い気分に浸ってしまいます。
特に「三振」という翻訳はかなり秀逸だと思われ、これは現在に至る日本の野球の空気感をこの言葉によって涵養されてきたと言っても過言ではないかと思います。
「三振」の原語は「Strike out」で、日本でも三振を取った際にはスクリーンに表示されたりしますが、最初に「三振」という言葉に慣れてしまっている日本人にとって「三振」は「三振」以外の何物でもないと思いませんか?特に実況が大声で「三振ーーーー」と叫ぶ場面にピッタリはまり、言葉としても三回ストライクで三振という実によくできた野球用語ではないかと思います。これは単なる文学的な側面から直訳しただけの言葉ではなく、野球が好きで野球を心から楽しむ者の感性が反映されているとしか言いようがありません。
それを証拠に、それより後世に日本に輸入された野球用語である「Designated hitter」はそのまま直訳されて「指名打者」というなんともセンスの感じられない野球用語となってしまいました。おそらく原語の意味から言っても「デザイン(調整)されたヒッター」的な意味かと思うので「指名」というのも少し意味が違う気がするしなんのことだかよくわからないままスルーしてきた野球ファンも一定数いるかと思います。多分正岡子規が生きていたらさぞ不満に感じるのではないかとふたたび妄想するのでした。