タイトル画像©️The New York Times
2017年に久々に訪れたニューヨークでは3年前にも参加したCreative Music Studioの即興の合宿ワークショップに参加しました。こちらのワークショップは森の中の宿泊施設で行われていて敷地内にはライブハウスやスタジオ(Barn=納屋と呼ばれていた)など音楽の合宿にはこれ以上はないほどの素敵な施設で行われています。基本このワークショップは即興音楽を基とし参加者はそれぞれの楽器を持ち寄り、レクチャーを受けたりするのですが、例によってRoomin’はおどりでの参加ということでややキワモノの立ち位置です。まぁでも二回目ということもあり、覚えていただいていた方も結構いてすっかり「市民権」は得た感じでした。
→前回:2017年久々のNYその3/Creative Music Studioの合宿WSでMin Xiao-Fen氏との出会い
このワークショップは三度の食事以外のほとんどをワークショップやライブに費やす、かなり忙しいスケジュールが組まれているのですが、この空気や高揚した気持ちの充実感で全く疲れを感じることはありません。CMSで行われるワークショップはゲスト講師以外によるもののほかCMS主宰のKarl BergerやIngrid Sertsoらによるいくつかの即興ワークショップも随所に散りばめられております。忘備録がわりに1日の流れをご紹介したいと思います。
01: Breakfast:朝食
はっきりいって会場のFullmoon Resortのごはんはすごく美味しいです。野菜をふんだんに使った数々のメニューをビュッフェ方式でいただけるとあり、食べることが大好きなOddRooming一行はついつい食べ過ぎてしまいます。Master WotazumiがかねてよりCDを複数枚所有し今回のガイディングアーティスト(講師)の中でも目をつけていた、Min Xiao-Fen氏と朝食をいきなりご一緒し、意外なほどに初対面から親近性を持って接してくださったのはかなりいい感触で出だしは上々です。
02: Body Work:ボディワーク(ストレッチ・呼吸など)
朝食後いきなりボディワークというのもなかなかハードかと思うのですが、この時間の講師はKarlの娘さんがおこなっています。基本こちらの床は土足なのでヨガのようなハードなポージングはありませんが立ったままできるストレッチや屈伸などを呼吸を意識して行います。ある意味満腹状態で眠くなりそうなところを強制的に目覚めさせるという効果はあったと思います。
03: Rythm/Voice:リズム/ボイスのワーク
Creative Music Studio主宰Karl Berger氏によるリズムワークショップはタブラのようなパーカッションを用いた「ガマラ・タキ」と呼ばれるもの。どうやらこのワークは伝統的に行われているようです。手法としては「ガマラ」と口ずさみながらとる三拍子のリズムと「タキ」と言いながらとる二拍子のリズムをベースリズムとして、その合間に別のリズムを変則的に増やしていき、ベースは保ちながらも即興的に対応できるようにするというものです。これは語学力は関係なく直感でできるので毎回楽しませてもらいました。
また、Ingrid Sertsoによるヴォイスワークショップは参加者全員で輪になり一人ずつ順に声を発して次々につなげていくというものです。このワークの面白さは、普段楽器を演奏するミュージシャンは少なからずテクニックを磨くことに注力し、どうしても技術的な部分に意識がいっぱいな状態でプレイしがちかと思うのですが、一旦楽器を手放して体一つにされた音楽家の人々が声だけだと「いかに自由になれるか」というところに意識が向いているのかなと印象で皆それぞれのヴォイスの意外性は非常に興味深いものでした。
04: Guiding Artist Workshop:特別講師の即興講義
ニューヨークで活躍するミュージシャンが講師となり即興メソッドを共有して皆で試すといった流れですが、この講師のミュージシャンはその世界では有名なアーティストであり、このワークショップの目玉となっていることは間違いありません。今回特に印象に残ったのはニューヨークのニュースクールというアート学校の先生であるTanya Kaimanovitch氏の「いかにして即興を終わらせるのか?」というテーマのワークショップ。確かに我々は普段、即興の度合いの熟練度が上がるにつれて、どのように終わるかということはわざと打ち合わせないような博打的信頼感で成り立っております。だから今更「どのように終わらせるか」ということに言及することがないのですが、それをしてもいいのだというむしろこのことに言及できるという「自由」さを感じるテーマだなと感じたのでした。自身もヴァイオリンの即興演奏家であるTanyaですが、大学で教鞭をとっているだけあって即興を特別なミュージシャンのものではないフラットな土俵に乗せた講義は、逆に自分の腕にある程度自身のある即興の手練れだからこそ狭めてしまっているかもしれない発想の可能性を広げられるような時間を過ごすことができました。
そして大本命、Min Xiao-Fen氏のレクチャーはワークショップの日程が佳境に迫った頃に行われました。私はこのワークショップの間すっとおどってきたもので、その頃にはMInさんはすっかり私のおどり体を気に入ってくれていたのですが、MInさんのワークショップは東洋のオペラ調の即興を全員で構築するというもので、その趣旨をひととおり述べた後に私に向かって「I need your Dance」と言ってくれたのです。ちょうどその日はCreative Music Studioのワークショップの様子を取材しに、かのニューヨークタイムズの取材陣が訪れておりました。えらい美人のカメラマンの女性が結構熱量のある撮影をしていたもので、私はMinさんの後押しもあり、かなりのびのびとおどっておりました。そういう様子が目についたのか、後日、その時の様子がニューヨークタイムズの紙面を飾ろうとは夢にも思わなかったのです。。。
なんとニューヨークタイムズに掲載されました
→まだまだ続くこのワークショップ。毎晩のお楽しみのライブでは憧れのミュージシャンと共演できる
2017ニューヨークツアーCreative Music Studioの合宿WS
→2017年久々のNYその3/Creative Music Studioの合宿WSでMin Xiao-Fen氏との出会い
→2017年久々のNYその4/Creative Music Studioの合宿WSでニューヨークタイムズの取材を受ける
→2017年久々のNYその5/Creative Music Studioの合宿WSは毎晩即興セッションのライブ