自称、舞踏界隈で一番のお笑い好き/笑ってしまうくらいの舞踏は最強だと思う/山崎広太@CAVE

BUTOH

おそらく私は舞踏をしている人の中で一番「お笑い」好き

私は日本の「お笑い」が好きです。特にニューヨークから帰国したときに久しぶりにお笑い番組をみたらあまりに面白くて自分が「お笑い好き」であることに気がついてしまいました。最近はYou Tubeでもお笑いのコンテンツが多くてハマるとずっと観ていても飽きないものです。ついつい笑ってしまい引き込まれる漫才って、例えシナリオがあっても、まるで今初めてしゃべっているような、全部アドリブのような筋書きを感じさせないしゃべりだと思うんです。そこにネタやしゃべり方や表情がうまく乗っかるとふわっと存在が立ってくるような…。即興のスキルも必要だと思いますし、相方への信頼関係もあるでしょう。

私自身、舞踏を観ていて一番評価したいのは「笑い」が起きてしまうくらいの事態に遭遇したときです。しかし、当然ながらお笑いとは違って、割とシリアスなシーンが多い舞踏公演では、観てる側は最初から笑おうと思って観ているわけではありませんし、ましてや笑ったら不謹慎なのではないかと躊躇される方もいるかもしれません。そのハンデを乗り越えて、しかも決して笑わせようとしているわけではなく、なおも笑いを起こさせるそんな名演には滅多にお目にかかれるものではありません。断っておくと、踊り手が少しでも「笑わせよう」という気持ちがあるような笑いというのは別物で、コミカルな演出に起きた笑いは私の感じた「笑い」ではありません。演者はあくまでも真剣そのもの、もしくはそぎ落とされた平常体であったりして、なにかゾーンというか神域に入ると「笑い」へ昇華されることがごく稀にあるのです。

ニューヨークでみた山崎広太氏の私の中での伝説的ソロ

その中でも特に印象に残っている舞台はニューヨークの「CAVE」という舞踏好きの場所があるのですが、そちらでみた山崎広太さんの舞台です。山崎さんの振り付けの舞台はそれまでに拝見させていただいていてあんまりピンと来なかったのですが(失礼)そのCAVEでの踊りは彼がひとりただおどるといったもので、最初は着流しを着て出てきたのでいかにも日本的な感じがしてあんまりいい印象はしなかったのです。そして流れる曲はひたすらニューヨークのクラブなどでよくかかっているような聞き覚えのある音楽でした。特に構成もなくその曲がローテーションしていくのですが、その中で振り付けやカッコつけることを放棄した如何しようもない身体はかといって逃げるわけでもなくひたすら舞い続けていて、その所作はあたかも窮した動物の見せるそのようでもあるけど、結構優雅だったりしてそして終盤に音楽がニューヨークの代名詞のような曲、Alicia Keysの「Empire State of Mind」になったとき、何かが昇華するのを私は観て笑いが止まらなくなってしまったのです。この曲は聞いたことのある方もいらっしゃると思うのですが、前半のラップを経てのサビで「ニューーーーヨーーーークーーーー」となるあの曲です。そこへ至ってのあの逃げもせず出しもせずの「様子」は、本当になんとも言えず最高で心の底から称賛してしまいました。

私はそれまでにどういう活動をしているかとか過去の作品がどうであったかとかいうことより、一度みた感動によってそれで評価してしまうのですが、その最たる例なのではないかと思います。

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