舞踏公演の値段設定には特に決まりはありませんが、東京なんかで行う公演だと相当数の招待を出していたりして、それが当たり前のようになっていたのですが、いつからか私はそれを撤廃する方向へ持っていっていた気がします。元々美術作家を目指し個展などをおこなっていたわたしは自分の活動の発表の機会には相当の持ち出しをすることが当たり前でした。銀座で個展を行なった際は、銀座としては破格に安い1日2万で10日間ギャラリーを借りていたものですが、(ぴあにも掲載されていたギャラリー)でもそれは駆け出しの作家としては当たり前の投資であり、それ自体が自分の活動だったわけで、むしろその個展の機会のために頑張って時給780円の花屋のアルバイトで生活もしながらお金を貯めていたと思います。だから舞踏公演を主催するようになって、テルプシコールあたりを借りて公演をしようとするやはり銀座の個展会場代と同じくらいはかかるのですが、舞台であるがゆえ入場料がいただけるので半分くらいは回収できて、「舞台ってなんて素晴らしいんだろう」と感動した覚えがあります。もちろんスタッフや記録など会場費以外にも色々あり、トータルでいくらかけるかはその人次第ですが…。
でも、活動を長く続けていくためには、やはりより経済的な負担を軽くしたいものです。おかげさまで長いことおどっていると様々なつながりなどができてきて、企画などでおどれるようになったりしてシビアな金銭の計算はしなくても済むようになってきました。ここ数年は前回のみずしの森のパフォーマンスの時のように(→久住高原みずしの森野外公演)場所は決まっていてその他のことはわたしにおまかせいただけることが結構あるのですが、そういう時の入場料の設定は「入場無料・投げ銭歓迎」に統一しています。これは大袈裟かもしれませんが、私が今までの20余年の舞踏活動のなかで辿りついた「発明」なのです。この会のように自分で会場費を持ち出さない場合は基本このスタイルでいけると確信しています。
まずこの「投げ銭歓迎」ですが、だいたい基本はどなたも1000円以上を入れてくださいますが、私は踊りが面白くなければ払う必要なはいし、逆にものすごくいいと思ってくだされば上限はいくらでも歓迎だと思っています。別に付き合いとか周りをみて値段を決める必要はなく、あくまでその人自身の気持ちで経済評価をするといういわば見る側にも考える機会が問われる一幕なのかなと。ちなみに投げ銭歓迎を英語で「Donations are greatly appreciated」と私は記載しています。このフレーズは、ニューヨークのJFKに着いて市内へ行くシャトルの車内に掲げられている「Tips are greatly appreciated」という言葉をマネしました。この素直な文体が私はすごく好きで、一目で虜になってしまいました。特に「Greartly」が控えめなんだか図々しいんだかよくわからない絶妙ラインだなと思います。Markにも普通に通じているのでまぁ大丈夫なのでしょう。