河合拓始さんは素晴らしい音楽家なのですが、(→河合さんが糸島にいた話)ご自身の活動の一環として、糸島の地元の神社奉納の演奏やパフォーマンスをされています。「糸島芸農」というビエンナーレの国際芸術祭がSTUDIO KURAというアート法人の主催で行なわれているのですが、お稲荷さんのある山や、蔵を利用したギャラリーなどを利用した展示・パフォーマンスがありその中のイベントの一つとして、河合さんが「イなりかぶら」というお稲荷様奉納パフォーマンスを行うということでそのメンバーとしてお声がけいただきました。そのメンバーは特に普段は表現活動をしているわけではない大人や子供ということで集めたとのことですが、メンバーを見てみるとやはり河合さんのことなので何かしら「そっち側」の人が多そうでした。初演は2018年糸島芸農の日程の中で会場は糸島芸農のメイン会場となっていた山の裾野にある「お稲荷様」。といっても畳敷きで社務所のような雰囲気ですが、ちゃんと祭壇もあります。こちらは美術展示の会場ともなっているようで作品も何点か展示されていましたし、当日には地元のフード出店などもあって結構賑わっておりました。メンバーたちはこの日のために稽古を重ね、パフォーマンスの構成に使う枝を山で拾い、頭を飾るシダの葉を山で調達して一同準備完了。パフォーマンスはカスタネットや「ヒューポン」と呼ばれる笛や木の枝、あとボイスを主な楽器として、人の出す最初の原始の音をリズムと即興により展開していくというような感じで、会場内を動き回り観客に絡んだり、偶発的なセッションを交えたり、あるいはフォーメーションを組んだり変形させたり、割と「高度な」演出ではないかなと思われるものでした。これがどういったジャンルのものであるかというと何かであるということは一言では説明しずらいのですが、はっきり分かるのは「稲荷奉納パフォーマンス」であるということです。でもお立会いいただいた観客の方々に関わっていきそこからまたアクションがかえってきて、みんなで参加できるパフォーマンスなのかなと思っています。
この「イなりかぶら」のパフォーマンスはこの年だけで芸術祭期間内の2公演と、後日に追加公演もあり、とても評判が良かったようでした。さらに、翌年、糸島市の民謡組合(?)の方でオファーを受けて市内随一の大ホール「伊都文化会館」での公演に参加することになったと連絡をいただきました。こちらにも参加させていただき、それまでのお稲荷さんで行われていた雰囲気とは全くちがう環境の中行われる稲荷奉納パフォーマンスは、プロのステージスタッフの方々の技術に支えられてこれはこれで「マジ」な感じが「シュールな神々しさ」を感じさせるような異質な舞台を体現していたのではないかと夢想しております。