地下鉄ホームで即興演奏していた白石民夫氏に出会う
東京での活動を継続していた私に転機が訪れて2012年3月ニューヨークに渡りました。当時の私は英語はどちらかといえば…どころではなく全くダメのレベル。地下鉄に乗るくらいがやっとこさ(日本語対応の券売機がある)。とても稽古場を探すなどという芸当が達成できるイメージは湧かず…。おどりの活動がままならないことにジレンマを感じていましたが、そんな時ニューヨークで長年活動している白石民夫(sax)さんの地下鉄での定期演奏を聴きに行き、はじめて白石さんにお目にかかりました。ちなみにこの「地下鉄の演奏」とは白石さんが定期的に行っている地下鉄構内公開稽古とでもいいましょか、乗降客が少なくなる深夜1:00頃に地下鉄のホームで演奏をするというもので、案内もされているので聴きに来る人もちらほらいます。(この場所は2路線が重なる少し幅の広い地下空間で、音の響きがよくなるところが気に入っているそうです。)白石さんの演奏に感銘すると同時に、日本語が通じて即興とか音楽とかおどりとかの話が久しぶりにできてなんだか生き返った気分がしました。そしておどる場を求めていることを話すと、白石さんがたまに稽古で使っている場所があるのでそちらで稽古をしましょうか?ということになり、ニューヨークに来てから初めてまともに踊ることとなったのでした。
稽古場所はニューヨーク外れにある下水処理場脇の道路
地下鉄7ラインのクイーンズに入った最初の駅で白石さんと待ち合わせをし、Gラインというニューヨーク市では極めてマイナーなエリアのGreen pointという街に。そこからさらに最果て感のある工場地帯の行き止まりのような場所に巨大な玉ねぎ型の構造物が4つほど合体してそびえ立っていました。どうやらこれが下水処理場らしく、行き止まりのような荒涼とした広い道路にビッグオニオン4体。なんとも素敵なsite specificに、白石さんの工場の操業音に溶け込むようなカナギリ音の中、久々に踊ることができてなんとなく手応えが感じられたのか、後日日を改めてパフォーマンスを行うことになりました。あのような場所にも関わらずはるばる観にきてくださった方々とも、まだ何を会話できるというほど溶け込んではおりませんでしたが、とにかくおどっている間だけは誰よりもその「場」を背負っているような、そんな私のおどりを体現するような印象的なニューヨークデビューだったと思います。
野外パフォーマンスの動画はこちら
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かつて灰野敬二氏と「不失者」を組んでいた白石さんのSaxは演奏という概念を超越しています。
白石さんがニューヨークの地下鉄で演奏した即興演奏を収録した伝説的CD
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